写真-1 遠心載荷装置
図-1 杭基礎模型
図-2 直接基礎模型
写真-2 せん断土槽
■ 直接基礎
 観測された地震動強さに比べて被害が小さかった建物の事例が報告されており,その要因のひとつとして,建物と地盤の動的相互作用効果が挙げられることがあります。動的相互作用効果を実用的に考慮するため,SRモデルなどによる地盤ばねが広く用いられていますが,現象の正確な把握には至っていません。そこで,地盤−構造物系の模型(図-2)を作成し、遠心場加振実験において基礎根入れ部の受働面・主働面に作用する土圧及び壁面摩擦力,基礎部底面に作用する鉛直力及び摩擦力を計測し,地盤工学の視点から動的相互作用について検討しています。
■ 杭基礎
 これまでに発生した地震の被害調査から,主に液状化地盤において,多くの杭基礎の被害事例が報告されています。杭基礎の損傷に伴って構造物が傾斜し,継続使用が不可能となった構造物も多く認められています。また,近年では,埋立地など液状化の可能性のある軟弱地盤に,杭基礎を用いた超高層ビルや免震建物などの長周期構造物が建設されており,杭基礎の損傷に伴う構造物の不同沈下や傾斜が,これらの構造物に甚大な被害をもたらす可能性も懸念されています。このように,液状化地盤における杭基礎の耐震性は重要です。そこで,せん断土槽(写真-2)を用いて地盤−杭−構造物系の模型(図-1)を作成し、上部構造物の固有周期や杭の剛性,地盤条件をパラメータとした振動実験を行い,杭応力の発生メカニズムの検討を行っています。これら一連の検討を通して,様々な地盤と構造物の条件を想定し,それに適した杭の設計法に関する知見を得ることを目的としています。
■ 残置杭
 高度経済成長期に建設された建物の老朽化に伴い,建て替え需要が急増しています。建て替えを行う際,コスト面や環境負荷を考慮して,既存建物の杭を地中に残すケースが多いです。そこで,遠心場静的載荷実験を行い(写真-3),地中に残された残置杭が,新規建物の杭の鉛直支持力,水平抵抗力に及ぼす影響について検討しています。
遠心載荷実験
写真-3 静的載荷実験

 基礎構造の研究は,遠心載荷装置を用いた実験を通して進めていす。遠心載荷装置(写真-1)とは、地盤に遠心力(40〜50G)をかけて振動(載荷)実験をするものです。例えば、50Gをかけると深さ20cmの土槽で深さ10mの土槽の現象が再現できます。この遠心載荷装置を用いて、液状化地盤における杭基礎の耐震性等の研究をしています。この遠心実験を通じて、地盤の奥深い性質や基礎構造の想定外の挙動に触れることができます。